ロックストロのThe Flute

忘れられた名著作


このThe Fluteという本は19世紀イギリスの著名なフルーテ 
ィストであったフルーティストであった ロックストロ(Richard
 Shepherd Rockstro)が1890年に書き下ろしたフルートと
いう楽器に関する百科事典とも言うべき大作です。

本は全四巻で二十三章に渡り、それらはさらに小さく935の
項目に分割されていて音響=Acousticという言葉の語源の説明
に始まり、古代フルートからベーム式フルートに至るまでの楽
器変換の歴史、各時代の代表的なフルーティストの列伝、フル
ートの奏法にいたるまで他のフルート関係の本には見られない
ほどに詳細な内容を誇っています。

これほどの本が今日顧みられていないのには、まずその項目が
あまりに詳細で、一般的な愛好家の読むには専門的過ぎたこと
によるでしょう。ほかにはロックストロがベームフルート及び
テオバルトベームその人に大して持っていた偏見、それもほぼ
敵意を抱いているといったような記述が見られる点も影響して
いると思われます。

当時、パリやロンドンのフルート業界ではベームフルートはベ
ームの完全なオリジナルでは無く、スイスのゴードンという人
のアイデアを盗用してでっち上げた物では無いかという論争が
ベームフルートの成功に対する嫉妬に比例する形で起こってお
り、ロックストロもその”反ベーム派”の先陣を切っていたわ
けです。

もちろんベームの功績を素直にたたえる人もいたわけで、その
代表のウェルチという人の書いた”ベームフルートの歴史”と
いう本が、これまた執拗にベームフルートに関してのベームの
正当性を主張する本で当時の議論の大きさが伺い知れる内容に
なっています。

ロックストロモデルという、とどのつまりはベームフルートを
改造した(トーンホールを大きくしたりCisをダブルホール仕様
にするなど)ようなフルートを開発しておきながらベーム本人
のことはこてんぱんにけなすという、その大人げのなさがこの
The Fluteという本の品格をかなり下げてしまっているのです
が、それを差し引いてもこの本が多くの貴重な資料を含む大変
興味深い大著作ということに変わりがないということで、この
度その内容の大まかな所を、内容的に特に面白いと思われる部
分を中心にご紹介しようということでベームの著作とあわせて
連載をすることになりました。

では、さっそくはじめましょう。

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