ベームのThe Flute and Flute Playing

8:メカニックのケアについて
 

ここでは題名のとおりベーム式フルートのメンテナンスの仕方やありがちなトラブルの対処法などが書かれています。まず「いくらしっかりと作られたフルートでも、キーは何回となく上下するわけであるから金属が磨り減るなどしていずれ何らかの不調をきたすことは避けられない」ということが書かれていて、現在でも全てのフルーティストが悩まされているメンテナンスの問題がベーム式フルートの登場と同時に立ち上がっていることをうかがわせる内容となっています。
それまではいくら多くのキーがついていてもそれらはそれぞれ独立した機構であったので、ひとつのトラブルが起きてもその不具合のある部分のみを修理すればよかったのがベーム式になるとそれぞれのキーが他と連動するシステムなので問題が一気に複雑化しています。


enokida:
そう、ベーム式円筒管フルートの最大の弱点はそこなんですね。たとえばEキーのパッドが破れて交換となったときには、単にそのキーのパッドを新しく交換するというだけでは終わりません。F#のキーとの連動を完璧にすると同時に両隣のFとDのキーとのレベル調整をするなど結構複雑な作業を必要とします。私は手は不器用なほうではないと思っているのですが、ベーム式フルートの調整にはやはり相当苦労しています。それに比べてベーム式以前の多鍵フルートではひとつのキーの不調は単にその部分だけを按配してやればいいだけなので楽です。1キーのトラベルソを吹くときには本番前にメカの状態を心配しなくていいというだけで心理的にかなり楽になる部分があります。

pankomedia:
良い楽器でもメンテナンスがちゃんとなされていないが為に「この楽器は鳴らない」という判断を下されてしまうケースは現在でも少なからずあるのですが、ベームも自分の開発した楽器がこの問題のために正しく評価されないということに対して危機感を持っていたようで、フルートのメカを分解することなどは最低限の道具を所持して幾らかの経験をつめば身につくこととして「すべてのフルーティストは少しくらいの修理技術を身につけておくべきで、その扱いを知らない人の手に楽器を預けたりしてはならない」などと、少々無茶なことを言っています。

enokida:
ベーム自身は金細工師でもあり自分の手の器用なことを自慢にしていた人ですが、切れた電球の交換すらできない人でもフルートを吹いてしまう現在ではベームの言い分は危険であるとさえいえますね。生半可に本を読んだくらいで楽器をいじると大変なことになってしまいますから。まあここでは、楽器は定期的に楽器屋さんに持って行って調整してもらいましょう、ということでいいんじゃないでしょうか?ベームの教えには反するかもしれませんが、そのほうが無難ですよ。

pankomedia:
そうですね。ここに書いてあるのは「良い子はまねをしてはいけません」という類の内容かも知れないので。

enokida:
そういうことですね。

pankomedia:
とりあえず工具類の写真だけでも少し掲載しておきます。


ドライバー

針バネ用のフック

パッドを押さえるクランプ

ヘッドコルクの位置調整用のゲージ

pankomedia:
針バネ用のフックがありますが、針バネを最初にフルートに採用したのは実はテュルーだということです。

enokida:
例のFlute Perfectioneeというやつですね。確かに円錐管ベームの初期のものには針スプリングは使われていなくて全て板バネになっています。板バネでは調整がしにくいので後にベーム式でも針バネが使われるようになったのでしょう。現在のフルートも針バネ無しには考えられませんからその恩恵を受けているわけで、こういうことを知ればテュルーの存在もまた身近に感じられますね。

pankomedia:
あと、私の気になったところといえばベームはパッドの高さ調整を紙でやっていたということです。フランスでは蜜蝋などのラックで固定するのが一般的で、パッドを止めるディスクも単純で強度の無いものでしたがBoehm & Mendlerのフルートは現在のもののようにネジでしっかりと固定するようになっています。

enokida:
確かにベームの楽器は私も紙調整ですがあまり問題ないですね。ルイロットはラックで固めていますけれども。イギリスのルーダルなんかは頑丈そうですが古いパッドの入ってる楽器を見るとやはりラックで固めてある。

pankomedia:
調整の紙を敷くときにパッドの方向を覚えておくためにパッドに印をつけておくといった、今日でも一般的に行われていることもここに書いてあります。

enokida:
ベームは古い人だという認識は本当に変えないといけませんね。私達がこの本から学ぶべきことは本当にたくさんありますよ。

pankomedia:
しかし、メカの話はこのくらいでいいでしょうか。

enokida:
そうですね。良い子にまねされても困りますから。


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